偏食について
食欲の秋、味覚の秋ですが、“かも川親子の療育室”に通ってくる子どもたちは、いろいろと食べられないものが多く、親御さんの悩みの種です。
療育に来る子どもたちは、食品そのものよりも、口の中に入った時の感覚にこだわっているような気がします。たとえばガサガサしている、ネチャッとしている、固い、柔らかいなど。それから一度覚えた味と同じものを欲しがったりもします。つまり興味・選択の幅がとても狭いのです。
当療育室の子どもたちも、なかなかのつわもの揃いで、幼児の頃はヨーグルトしか食べなかったとか、なっとう大好きでメーカーにもこだわるとか、ウインナーの曲がり具合と味が一緒でないとダメとか…。そんな親泣かせの子どもたちも、みんな給食を食べれるようになって、今では「あの騒ぎは何だったのか」と親御さんが笑いながら報告してくださいます。学校という団体の中で食事をすることと家庭の中で食事をすることは、子どもにとってどうも意味あいが違うようです。
『偏食』とはどういうものかというような定義はなく、簡単に言えば『好き嫌い』ということになるのでしょうか。食品選択の幅が広がり、栄養学的にもうるさく言われるようになって、親の方が気にするようになったとも考えられます。さらに小学校入学後の給食のことを心配して、好き嫌いのないように育てておかなければと思われるようです。
野菜(ネギ、人参、ピーマンなど)が嫌いな子もいれば、肉や魚が苦手な子もいます。また同じ食材でも、料理の仕方によって食べたり食べなかったりする場合もあります。
なんとか野菜を食べさせようと、ハンバーグの中にホウレンソウを練りこんだり、野菜ジュースにしたり、一生懸命に工夫する親御さんもいらっしゃるのですが、私はいつも「そんな時間があるなら、子どもと遊んだ方がいいよ」と伝えます。
親がやっきになればなるほど、カレーやハンバーグの中に今度は何が入っているのかと疑って、ますます子どものこだわりを強化してしまうこともあります。
それでもなるべく好き嫌いはなくしたいと思うのは、親として当然のことでしょう。
その場合は、嫌いなものは“ほんの一口だけ”の量にしてあげてほしいと思います。子どもの大好きなものと組み合わせて、叱責や強制はやめて、楽しく食べれるようにしてほしいです。
幼い頃の食事の躾として大切なことは、決まった時間に、親が提供したもの(自分勝手に冷蔵庫から出してくるのではなく)を、適切な時間内(20~30分くらい)に、自分(スプーンや箸を使って)で、食べられるようになることです。そして適切な時間内に食べられるように、子どもにあった量にしてやることが重要です。
ボロボロこぼすな、肘をつくな、正しい箸の持ち方などのマナー的なことは次の段階です。
親の方も、食事前に与えるおやつの量を調節する、料理を子どもの好きな味つけにしてやるなどの配慮は必要でしょう。
食事の雰囲気を楽しくすることは、子どもの食欲を促すことになるでしょう。