着替えについて

朝の忙しい時間帯に、子どもの着替えで苦労すると、よく親御さんからお聞きします。

そもそも“かも川親子の療育室”に来られるお子さんは、『着替える』という意味がわからないことが多いです。朝起きて、顔を洗って、服を着替える、食事して、歯を磨く、というような一連の行動の意味がわからないのです。“かも川親子の療育室”には、そんなお子さんのために、それぞれの場面に適応した絵カードを用意しています。

服を着替えるのを嫌がって走り回る子を親が追いかける、そんなことを繰り返していると、いつのまにか子どもにとっては、それが楽しい遊びになってしまいます。

『服はここで着ます』という目印になるように、無地のマットなどを敷いたコーナーを作り、そこに着替え一式を揃えた大きめのカゴや箱(子どもの目に入りやすいような浅めのもの)を置きます。カゴ(箱)の中の衣類が全部なくなれば『おしまい』です。着替えの途中で、靴下を取りにいったり、シャツを出したり、気の散るような行動をさせないことがポイントです。そのためには、先ずは親御さんがしっかり準備しなくてはなりません。子どもの動きやすいような動線を、一度イメージしてみてください。

衣類を置く場所も、なるべく一箇所にまとめる方がいいでしょう。下着類はふろ場の近くにあったり他の衣類は居間にあるというような状態では、子どもは混乱するばかりです。子どもが移動する間に余計な物が目に入って、『着替える』という行動を忘れてしまうからです。

子どもが少しでも自分で着替えられるようにしたいと思われる親御さんは、たくさんいます。“かも川親子の療育室”に来られていたママのアイディアを紹介したいと思います。

ズボンやトレーナーの前側がわかりやすいように、とても小さなアップリケを付けるのです。ズボンは前の部分に付けるのは誰もが思いつくことですが、このママの素晴らしいところはトレーナーやセーターは首周りの後ろに付けたことです。小さな子どもは床において服を着るでしょうから、襟元の後ろ側に印の付いているのを確認して、そのままかぶればいいわけです。

ソックスも少し緩めの方が履きやすいでしょう。つま先部分だけ親御さんがかぶせてやって、後は子どもに上げさせるとか、段階的な手助けは必要です。ボタンを閉めたり外したりも、子どもにとっては難しい作業です。目に入りにくい上の部分は、親御さんがやってあげていいのです。目で見やすい下の方を、少しずつ自分でできるように練習すればいいのです。ボタンを半分だけ留めてやり、残りの部分を子どもに引っ張らせるとか、最初から完璧を求めないことです。

子どもが十分にできることを親が手伝ってしまうことは甘やかしですが、手先も不器用で十分にできないことを段階的に親が手伝うことは、甘やかしではありません。

発達障碍の子どもの着替え