かくれんぼ
子どもと話をしていると、突然ハッとすることがあります。鋭いなあと感心したり、
私の子ども時代のことを突然思い出したりします。
「かくれんぼって、嫌な遊びだね」と女の子が言いました。「どうしてそう思うの」と訊いてみると、なるほど、と納得しました。
三人でやる、かくれんぼの話です。
一人が鬼になって、二人がそれぞれ別の所に隠れるのはいいのだけれど、二人一緒に隠れていて、それを見つけてしまった時の気持ちについて話してくれました。
「すごく嫌な気持ちになる」
「私のこと、何か言ってたのかなあと思ってしまう」
「ちょっと寂しい感じなのかな?」と私が言うと、「うん、なんか寂しい」と女の子は言いました。
「あまり早く見つけたら悪いかなあと思って、少しゆっくり探したりする」
「いろいろと気を使ってるんだね」と、私は応えました。
私にも同じような経験があったことを思い出しました。
家も近所でいつも一緒に遊んでいた友達のトモちゃん(仮名)と、4歳くらいの男の子シュンちゃん(仮名)も連れて、かくれんぼをした時のことです。シュンちゃんはまだルールがよくわからないので、一人で隠れるのは難しいから一緒に隠れることになりました。最初は私が鬼で、ドラム缶の陰に隠れたトモちゃんとシュンちゃんを見つけることができました。次は、私とシュンちゃんが隠れる番です。
大きな木の後ろに一緒に隠れてじっとしていた時、シュンちゃんが小さな声で言いました。
「さっきね、隠れたときね、どっちのお姉ちゃんが好き?ってきかれたよ」
私はとても驚いてしまいました。いつも一緒に遊んでいるもの静かなトモちゃんが、そんな大胆な質問を小さなシュンちゃんにするのかしら?
なんて答えたのって、私はシュンちゃんに尋ねることができませんでした。少し心臓がチクチクするような気がしているうちに、鬼に見つかってしまいました。
その日は、家に帰っても、なんとなくトモちゃんの言葉が心に引っかかっていました。でも翌朝は、いつも通りにトモちゃんと一緒に学校に行って、放課後は一緒に遊んで、そのうちにトモちゃんの言葉も忘れてしまいました。
今になって考えてみると、いつも私がリーダーシップを取っていて、こうしよう、こんなのどう?と私が発言すると、トモちゃんの答えはいつも「うん、いいよ」でした。単純にそれでいいのだと思っていたのですが、本当はトモちゃんにも言いたいことはいっぱいあったのかもしれません。「どっちのお姉ちゃんが好き?」は、トモちゃんにとっては重要な質問だったのだと思います。そんなことを今頃になって、反省も含めて思い出しました。
「もう、いいかい?」「まーだだよ」と、「もう、いいかい?」「もう、いいよ」の間の中で、実はとても複雑な心模様が織り込まれているのかもしれません。